前回記事では春日鉱山の位置と産地の最新状況をお伝えしました。今回は、その際に観察/採集が出来た鉱物を紹介します。
前回の記事はこちらから→地味だけど面白い?春日鉱山の鉱物①
春日鉱山の地質は?
県道32号線を進んでここまで来たが、途中で粕川の河原の石を覗くと、藤原岳で紹介した石灰岩が転がっている事が分かる。一方、美束の粕川の河原には白い転石に交じり、半透明の石英や白い長石と黒雲母の黒い粒々が混じった花崗岩が現れる。
藤原岳の石灰岩はこちら→石灰岩のヤマ(鉱山)!藤原岳①
石灰岩は堆積岩でカルシウムを主成分とする岩石である。一方、花崗岩は石英・長石・雲母を主体とした火成岩の一種である。この二つが組み合わさるとどうなるのでしょうか?石灰岩に含まれるカルシウムと花崗岩に含まれるシリカ・アルミナなどが混ざり合い、成分を交換する。これを難しい専門用語で接触変成帯という。
接触変成帯ではカルシウムCaとシリカSiO₂、アルミナAl₂O₃を組み合わせることで珪灰石Ca(SiO₃)や灰バン柘榴石Ca₃Al₂(SiO₂)₃のような鉱物が生成される。
一方、春日地域の石灰岩は一味違っている。石灰岩のカルシウムCaがマグネシウムMgに変換されており、苦灰石(ドロマイト)という別の鉱物に変化している。よって、一般的な接触変成帯ではカルシウムCaを含む鉱物が生成されるが、春日鉱山ではマグネシウムMgを含む鉱物が見られる。マグネシウムMgを主成分とする接触変成帯は珍しく、気軽にアクセス出来る春日鉱山は貴重である。
鉱物の産出状況
先の章でも紹介したように、春日鉱山の鉱物はマグネシウムに富む接触変成帯の鉱物である。今回訪れた美束では、マグネシウムを主成分とするドロマイト中に接触変成作用で形成された鉱物が固まり状で産出する。また、石灰、カルシウム分も全く無いわけではないので、カルシウムを主成分とする鉱物も観察ができた。
春日鉱山の鉱物の産出状況を写真に示すが、ドロマイト中に鉱物が塊状に含まれており、風化が進むと写真のようにドロマイトの表面に浮き出してくる。
しかし、十分に風化が進み浮き出した標本は見当たらない。あったとしても小さいか、十分に浮き出していない。現地で観察が出来た様子をもうひとつ紹介したい。こちらは割れたドロマイトの断面に金雲母等の鉱物が見られる。
このような金雲母を含む石には斜ヒューム石が含まれるはずであるが・・・ありますね!斜ヒューム石!濃いオレンジ色の粒はまさに斜ヒューム石ではないでしょうか?ただ、この金雲母や斜ヒュームを含む石は非常に大きかった為、観察に留めました。
まだまだ様々な鉱物がありましたが、そちらは次の記事で紹介をさせて頂きます。
次の記事→地味だけど面白い?春日鉱山の鉱物③
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