いよいよ久根·峰之沢鉱山の紹介も最終章。ミネラルショーでもなかなかお目に書かれない峰之沢鉱山の銅鉱石の産地へ
前回記事はこちら→鉱物の不毛地帯!?かつての大銅山は今?③
鉱物採集の味方 航空写真?
大規模な鉱山の運命でしょうが、峰之沢鉱山の石捨場、いわゆるズリはほとんど残っていないと言われています。理由は環境意識の向上、ズリ場に捨てられた鉱屑からの有害物質の流出や積み上げられた土石が災害を引き起こすからです。そのため、近代の大規模な鉱山はズリ石を廃坑に埋め戻す場合も多いと聞きます。
ただ、久根鉱山や峰之沢鉱山でもズリ場が残っていない訳ではなく、林道から分け入った山奥や河川を越えた対岸(いずれもアクセス道無し)など、リスクを取れば鉱石を採集可能です。しかし、面倒くさがりの私としては手軽にアクセスできる産地を求めてしまう訳で···。
峰之沢鉱山の往年の姿が写った航空写真が国土地理院にて公開されています。
国土地理院HP→https://www.gsi.go.jp/tizu-kutyu.html
国土地理院のHPより地図表示を航空写真に切り替え、1974年から1978年の航空写真を選択すると、閉山直後の峰之沢鉱山の姿を感じる事ができます。その航空写真と現在の地図を見比べていると、下記の位置で手が止まりました。左上の茶色い屋根群が峰之沢鉱山の城平社宅でしょうか?そして画像中央のバッテン印のところは、60m坑道から140m坑道まで峰之沢鉱山の坑道が連なる位置です。そしてその下、坑道から大沢と呼ばれる沢まで茶色いズリ?が広がっています。そして現在の地図を見比べて頂くと分かるのですが、ズリを削るように現在は新たな林道が走っています。Googleマップ上では植林されておりズリ?は無くなっていますが、林道から徒歩10秒!これは気になる。
さっそく現地調査に行ってきました。
60m坑道直下のズリへ
さて、写真①が現地の様子。林道からみえる大沢という沢は大きな岩がゴロゴロしています。左斜面(沢の右岸)全体が60m坑道直下のズリ跡だと思いますが、植林により航空写真に見られたようなガレ場は無くなっていました。とりあえず沢沿いに進んでみます。
沢の左岸を沢沿いに100メートル程進み、沢に降りてみました。そこからズリがあった斜面を見上げた様子が写真②、明らかに自然石ではないサイズの揃った転石が斜面一杯に広がっています。山の斜面を覆うように広大な面積に広がっており、これはズリ場と見て間違いなさそう。
ズリ場と思しき転石は苔が蒸しており、さらに枝や落ち葉が堆積しているので、石の表面が分かり難いが、手頃なサイズの転石を割ってみました。その断面が写真③。写真中央の銀色でキラキラした部分は黄鉄鉱、それをペラペラと剥がれる母岩、結晶片岩が覆っている、これは2章で紹介したガイドブックにあった、「鉱液が結晶片岩と互層をなして出来た物である。扁頭状鉱層鉱床」と一致しており、写真の鉱石は久根·峰之沢鉱山の主力鉱石であった含銅硫化鉄鉱で間違いでしょうか。
しかし、これらの転石は長年の風化により脆い物が多く、鉱石標本としてはかなり微妙···。そこでさらに範囲を広げて探してみると、沢の流水の中に錆が浮いた鉱石が!手に取ってみたが、かなりズッシリと重くて硬い。沢より引き上げた様子は写真④。最終的にそのような鉱石をいくつか割り、サンプルを持ち帰りました。
採集出来た鉱物
持ち帰った鉱石を観察し、鉱石に含まれていた鉱物の肉眼鑑定をしてみました。ちなみに峰之沢鉱山で最も特徴的であろう含銅硫化鉄鉱の外観は写真①、美しい縞状構造を示している。これは結晶片岩の片理に沿い黄鉄鉱が鉱染してその粗密が模様となるらしい。
続いて黄鉄鉱、大きな結晶は少ないものの微細で綺麗な結晶がたくさん有りました。写真②のように石英質の母岩に含まれていました。ちなみにこれは黄銅鉱と言えるサンプルは見つけられませんでした。
次は斑銅鉱、含銅硫化鉄鉱床では初成や二次成、様々な形態があるようだが、今回見つけた物は石英や黄鉄鉱に囲まれて隙間に存在している。なので二次成かなと考えています。写真③を参照。
続いて銅藍···かな?斑銅鉱と黄鉄鉱に伴い存在している。ただ青紫を示す斑銅鉱が大部分だが、顕微鏡観察で劈開面がありそうな部分があるので断定が難しい。写真④を参照。
そして最後がカロール鉱(またはリンネ鉱)?、峰之沢鉱山の黄鉄鉱は正四面体ばかりなのですが、その中に1つだけ八面体の個体が、もちろん黄鉄鉱にも八面体はあるので何とも言えませんが、ルーペ観察で観察したときに銀色にキラキラと光るので疑っています。写真⑤は疑っている八面体の結晶の拡大写真。
その他、金属以外の鉱物として方解石や緑簾石のような物が見られました。全体的に金属鉱物もその他の鉱物も結晶のサイズは小さく、石英はあるものの水晶などの鉱物が見られない事から、熱水や地熱作用はほとんどない産地なのかと思います。···となるとカロール鉱やリンネ鉱は無いのかも。
明確に判別が出来た金属鉱物は黄鉄鉱と斑銅鉱のみでしたが、また機会が有れば訪れてみたいと思います。最後に、周辺には茶畑や民家が広がっていますので、くれぐれもマナーに気をつけて下さい。では、久根鉱山と峰之沢鉱山を巡る旅はこのへんでおしまい。また、新たな発見が有ればアップしたいと思います。では、このへんで!
コメント
いつもながらの きれいな写真や 説明ですね
大井と似た感じですね・・久根も類似なんでしょうか
層状はよくわかりますね
これぞ 銅鉱石というものを 見てみたいのですが、なかなかないですね
花房にも行きましたが 来訪者が多いのか 全く拾えませんでした
先日は 本にのっている矢坪鉱山のズリに行ってみましたが、よそうどうり 何もなしでした(笑)
ありがとうございます!
大井も似たような黄鉄鉱がたくさん有りましたね。これぞ銅鉱石というのはこの辺では難しいのかもしれません。
矢坪はどちらのズリに行きましたか?昔は洞戸鉱山でもギラギラした黄銅鉱が拾えましたが、今は厳しいでしょうね。