前回、前々回と津具金山の鉱物産地と金属鉱物のクリーニング方法を紹介してきましたが、やっと本編(?)、2019年5月現在、どのような鉱物が採集できたかを紹介して行こうと思います。
前回記事はこちら→奥三河でゴールドラッシュ気分?津具金山の金属鉱物②
前々回記事はこちら→奥三河でゴールドラッシュ気分?津具金山の金属鉱物①
鉱物一覧
ここまで紹介をしてきたように、津具金山は金属鉱物が多い。金属鉱物の代表的物と言えば、黄鉄鉱や黄銅鉱のような鉱物であるが、津具金山の目玉となる金属鉱物と言えば輝安鉱である。
輝安鉱をインターネットで検索すると日本刀のような黒光りする剣状の結晶が紹介されている。日本国内の有名産地としては愛媛県の市ノ川鉱山があり、まさに日本刀のようは立派な結晶が産出した。その立派な輝安鉱の結晶は海外にも渡り、大英博物館のような海外の有名博物館で飾られたことから、金属鉱物の日本代表となっている。
しかし、市ノ川鉱山でそのような立派な結晶が出たのは明治時代、津具金山も閉山して久しく、立派な輝安鉱の結晶の採集は不可能である。では、2019年の令和の時代に小さくても良いから輝安鉱は採れるのであろうか?
実は…採れました!小さい結晶の集合体ですが、母岩の表面を覆うように付いた輝安鉱が1個体だけありました。写真のように黒っぽく酸化しているものの、針状の集合体です。
和名:輝安鉱
英名:Stibnite
組成:Sb₂S₃
産出量:少産△
続いて、方鉛鉱。こちらは鉛の鉱石として一般的である。名前の通り、割ると立方体に割れる鉱物で、割りたての外観は銀色に光り輝いているが、今回採集されたものは長年の風雨により灰色に変色している。銀を不純物として含むことも多く、銀の鉱石とされることもある。
和名:方鉛鉱
英名:Galena
組成:PbS
産出量:普通〇
次は黄銅鉱と閃亜鉛鉱の塊。今回、採集できた鉱石では最大の物で、クリーニングにより見事に輝きが回復した。閃亜鉛鉱は名前の通り、亜鉛を含む鉱石で、閃光を放つように光り輝いて見える。実は閃亜鉛鉱の屈折率はダイアモンドに匹敵する値であり、透明度が高く固い鉱物でれば宝石となっていたかもしれない。しかし、実際の閃亜鉛鉱は鉄やカドミウムなどの不純物を含む場合が多く、鉄分が多いほど黒くなる。津具金山産のものは黒色であることから多量の鉄を不純物として含んでいると考えられる。黄銅鉱は主要な銅鉱石でもある。黄鉄鉱と見分けが付きにくいが、黄銅鉱は塊状に対して黄鉄鉱は結晶化しやすい事、金色が濃く粉末が黒っぽくなる事から判別ができると思う。
和名:閃亜鉛鉱
英名:Sphalerite
組成:ZnS
産出量:通常〇
和名:黄銅鉱
英名:Chalcopyrite
組成:CuFeS₂
産出量:通常〇
最後に黄鉄鉱、一般的な鉄鉱石である。金属鉱山のみでなく、様々なところで産出する一般的な鉱物である。結晶形状はざまざまな物が知られているが、今回の標本は立方体の結晶である。黄鉄鉱は硝酸に溶けるので、クリーニングの際には硝酸は厳禁である。…硝酸の購入は難しいが。黄鉄鉱は焼くと亜硫酸ガスを生じる為、硫酸の原料となる。また、焼いた黄鉄鉱は酸化鉄として製鉄原料になる。
和名:黄鉄鉱
英名:Pyrite
組成:FeS₂
産出量:多産◎
以上のように様々な金属鉱物が採集できたが、その他にも小さな水晶などもあった。今回紹介をした金属鉱物は、不純物として金や銀、カドミウムなどの元素を含む。今回採集をした金属鉱物の不純物などを調べてみたいと思う。
参考文献
1、標準原色図鑑全集6 岩石鉱物 木下亀城、小川留太郎(保育社)
2、原色鉱石図鑑 木下亀城 (保育社)
3、楽しい鉱物学 堀秀道 (草思社)
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