鉱物の不毛地帯!?かつての大銅山は今?②

地質

さて前回からの続き、鉱山跡を巡る旅へのプロローグは続きます。

前回記事はこちら→鉱物の不毛地帯!?かつての大銅山は今?①

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途中の立ち寄りポイント②(ダム編)

北遠には天竜川と呼ばれる河川がある。源を遥か遠くの諏訪湖に発し、太平洋の大海原、遠州灘にまで達する200キロ超の大河川である。主に領家帯の花崗岩地帯を抜ける天竜川はたくさんの土砂を運び浜松市や磐田市が位置する遠州平野を作り、日本三大砂丘と言われる中田島砂丘の砂浜を形成した訳である。

今でも広大な砂丘が広がる中田島砂丘であるが、現在の中田島砂丘はどんどん海岸侵食が進んでおり、地元の人曰く、昔は今の3倍の広さがあったと言う。

この砂丘の侵食の原因は、たくさんのダムが天竜川の流れを止めているからであろう。現在、静岡県の天竜川にあるダムは佐久間、秋葉、船明であるが、当初の計画では山香ダムも含め合計50万kWの発電を目指す計画であったとか。それぞれのダムに特徴があるが、やはり竣工当時、堰堤の高さも発電量も日本一であった佐久間ダムの壮観さは格別である。

佐久間ダムの開発は久根鉱山の開発と無関係ではなく、久根鉱山の発電用ダムとして作られた旧豊根ダム(田鹿堰堤)があり、そのダムの貯水を用いた豊根発電所が佐久間ダムの建設により水没している。豊根発電所による発電量は1000kW程度であったが久根鉱山の電化に大いに寄与し、電気機関車や電動削岩機などの導入が行われた。しかし、たらればの世界であるが、久根鉱山にて銅鉱石精錬も行われていたら、佐久間ダムで発電された電気を用いた電気銅精錬工場も出来ていたのであろうか。

佐久間ダム付近の谷筋の岩石をみると、白くて硬い花崗岩が多いことが分かる。佐久間ダムの建設地点付近は広く領家帯の花崗岩(勝間・熊伏花崗岩?)が広がる地域であり、これもダム建設地点として選ばれた理由と思う。コンクリートを大量に用いるダムでは、ダムが建設される地点に過大な重量がかかるとされ、建設現場では風化した岩石を発破/削岩して取り除き、さらに残存した土砂を水洗いを繰り返して徹底的に磨きあげるという。時には作業員が手で岩盤を磨くこともあるとか。その為、佐久間ダムが建設される地点の岩盤である硬く均一な花崗岩はうってつけであったと思われる。

佐久間ダム
秋葉ダム

銅鉱山の遺構達(久根鉱山へ)

このような電源開発と鉄道敷設の歴史に埋もれるように、ひっそりと銅鉱山の施設と遺構が点在しています。静岡県内の天竜川沿いには大小様々な銅鉱山があったと記録されており下流側から、伊砂/相津/大沢/西ノ池/井戸沢/峰之沢/名号/天白/黒瀬/大井/鮎釣/久根と広範囲に広がっている。この中で、峰之沢鉱山と久根鉱山がメイン鉱山であり、その他の鉱山は支山や坑口と言った扱いと考えられる。

その中で久根鉱山は特に有名な鉱山であり、昭和16年発行の鉱物ガイド 愛知懸産岩石並鑛物採集必携(柿原喜多郎著:つわもの社) には黄銅鉱の産地として紹介されている。しかし同書によると、「悪い銅鉱は白色味を帯びる黄色Cu3Fe4S3(又はCu3Fe3S4)の割合より成る。Cuをとるのには不適である。此等は硫酸製造の原料とする。久根鉱業所産のものはこの悪い方に属する。」とあり、銅鉱山として稼働しつつ硫酸原料として硫化鉱石を採掘していたらしい。また、鉱石は「鉱液が結晶片岩と互層をなして出来た物である。扁頭状鉱層鉱床」となっており、見た目の華やかさは感じない鉱石であるとわかる。

実際、久根鉱山の支山として開発された名号鉱山の鉱石の銅含有量は1.46%に対して鉄含有量が20.35%となっており、呼び名も含銅硫化鉄鉱と呼ばれるように圧倒的に鉄=黄鉄鉱が多い鉱石であったらしい。ただ、鉱床の深度により銅含有量は変わり深度、深い鉱床になると10%前後まで銅含有量が上がるという特徴がある。これは結晶片岩に鉱液が染み込み形成されたとされる久根鉱山の特徴をよく表しており、銅を含む鉱液が深い鉱床から浅い鉱床へ浸潤し銅鉱床が形成されたため、深さや鉱液の供給状況により銅含有量が大きく異なったわけである。すなわち銅山としては安定しない品位の鉱石を追いかけ、精錬をするうえで敵となる硫黄分(硫黄酸化物)が大量に含まれる鉱石を山奥で精錬するわけにもいかず、高いコストをかけて古河鉱業の精錬工場へ運ばれて処理がされていた訳である。

写真は現在の久根鉱山の沈殿処理施設を国道から覗いた様子である。今も坑口から流出が続く鉱液を含む排水を処理する沈殿池が管理されており、錆色の沈殿池が見える。赤錆色の廃液が銅よりも鉄を多く含む状況を教えてくれる。しかし、勿論、沈殿池は立ち入り禁止なので上から見るだけにしましょう。天竜川沿いから鉱山施設が観察できるカヌーツアーがあるらしいので参加をしてみるのも面白いと思う。

久根鉱山の沈殿池
鉱山施設はもちろん立ち入り禁止

久根鉱山の紹介はここらでおしまい。さらなる遺構と鉱石が残る峰之沢鉱山へ移動をしましょうか。記事も一旦切ります。

続き→鉱物の不毛地帯!?かつての大銅山は今?③

参考

愛知懸産岩石並鑛物採集必携 柿原喜多郎 (つわもの社)

含銅硫化鉄鉱の性状について 地質学調査所月報

下伊那の地質解説 下伊那地質誌編集委員会

コメント

  1. bandlover より:

    お~ 久しぶりの 投稿ですね

    いつも 貴重な 紹介 ありがとうございます  

    この地域 だいぶんと 調べました  鮎釣地図も入手しました 坑口からの索道があります
    水窪にあった 西浦鉱山の資料も見つけましたが、行ってみるまでもなさそう

    鮎釣に行ってみようと思うのですが 浜松北からのほうが 新城から北上するより楽なのかな

    • gifunoz3 gifunoz3 より:

      続きを書こうと思ってますが、時間が取れず中断してます。
      本坑(60坑)の銅鉱石産地を書こうかと思ってますが、書きながら疑問発見もあったのでもう一度現地も行きたいと思いつつ思案中

      鮎釣も索道があったんですね!廃林道があるようなので藪こぎすれば行けるのでしょうか?

      三遠南信道が開通すればイナサJCTから佐久間まで抜けるのが1番便利だと思います。今回は廃線跡も見に行きたかったので浜北からにしました。

      • bandlover より:

        本坑・・久根鉱山でしょうか

        鮎釣・・林道ではなく下の舗装道路から 坑口までの杣道が書かれています

        メールで情報送りました

        • gifunoz3 gifunoz3 より:

          峰之沢鉱山です。60m坑から140m坑が
          縦に並ぶ付近です。

          情報ありがとうございます!メールにてやり取りしましょう!

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