現存するものの厳重に関係者以外の立ち入りを拒んでいる久根鉱山を後にし、自然に還りつつある峰之沢鉱山を目指します。
前回の記事→鉱物の不毛地帯!?かつての大銅山は今?②
久根・峰之沢鉱山の鉱床について
先の記事で久根鉱山は硫化鉄がメインの銅鉱床と言いましたが、正式には久根・峰之沢鉱山の銅鉱床はキースラガー鉱床(火山性塊状硫化物鉱床の一種)であり、別名、別子型銅鉱床とも呼ばれる。別子型と呼ばれる所以は、かつて住友財閥の勃興を支えた大銅山、別子銅山の鉱床がこのキースラガー鉱床であったためである。これは玄武岩火成活動に伴う熱水により、海底で形成された熱水硫化物鉱床がプレート移動に伴い地上に現れた物とされる。また、三波川変成帯に沿って槙峰鉱山(宮崎県)、別子銅山(愛媛県)、白滝鉱山(高知県)、飯森鉱山(和歌山県)、五条鉱山(奈良県)とキースラガー鉱床は存在しており、三波川変成帯によく見られる鉱床である。比較的規模が大きなものが多く、代表例である別子銅山では70万トンの銅を産出しており、熱水型の鉱床の銅山である足尾銅山や紀州鉱山と並び、日本の銅生産を支えて来た訳である。
ちなみに似たような成因の鉱床として秋田県の小坂鉱山で有名な黒鉱鉱床がある。黒鉱は銅だけでなく金銀鉛亜鉛や希土類なども含まれており、有効な開発がなされれば日本も資源大国になれると思う。このような海底熱水鉱床は現在も日本近海で成長を続けており、海底鉱山の時代が来るのであろうか?写真は東海大学自然史博物館に展示されているマンガンノジュール。他に熱水鉱床やレアアース泥の展示もある。
キースラガー鉱床では熱作用の大小に比例し、結晶粒度の増大と黄鉄鉱のニッケルやコバルトへの置換が行われるとあり、ニッケル黄鉄鉱やカロール鉱などがキースラガー鉱床の鉱山でも見つかっている事から、峰之沢鉱山や久根鉱山でもこれらのニッケル鉱物やコバルト鉱物が期待出来るのではないかと考えています。同じ三波川変成帯の塩基性岩地帯である天竜鉱山(長野県/静岡県)ではニッケル採掘がされていた事を考えると、まったくの夢物語ではないかと!?
峰之沢鉱山の遺構へ
さて、いよいよ峰之沢鉱山に向かいます。峰之沢鉱山は秋葉ダムが形成する秋葉湖の湖岸から山頂に掛けて広がっています。具体的には秋葉湖に掛かる峰之沢橋(国道152号線では青谷ポケットパークと呼ばれる駐車スペースが分かり易い)から秋葉湖の東側の山の斜面全体が鉱山跡です。
この峰之沢橋を渡った先の数十メートルほど下流に、1つ目の鉱山の遺構が見られます。湖岸の県道からダム湖にせり出したコンクリート構造物がある(写真①)。この一帯は鉱山稼働時は貯鉱所があったらしく、このコンクリートの構造物もその一部と思われる。老朽化が著しいので乗らないようにして下さい。
このコンクリート構造物を起点として、山の中腹から山頂にかけて峰之沢鉱山のインクライン跡が見られます。山を登りながらですと様々な遺構を見る事ができますが結構危険なので、インクライン跡に交差するように(遠回りだが)つづら折りで存在する舗装林道を登りながら探索をすると良いでしょう。林道を進み先の貯鉱所を上から見ると写真②のような感じで、ホッパーと思しき穴のあいたコンクリート構造物がみられます。湖と反対側、山の斜面側には写真③のようなインクラインの切り通しがあり、45度の急斜面を登っていた往年のインクラインの凄さを感じます。
さらに先へと林道を登って行きます。(途中いくつも林道の分岐があり説明が難しいのですが、探すのも楽しみの1つと思います···)林道を進むと中腹に製材所があり、この製材所の位置は元々は選鉱所の跡で、鉱山からのトロッコ線が引き込まれていたらしく、製材所に残るホッパーはそのトロッコ線の終点であろう(写真④)。
最後に、周辺及び林道は地域住民の生活圏なので、路上駐車や民家·製材所敷地へは立ち入らないようにしましょう。
以上、峰之沢鉱山の遺構巡りでした。肝心の鉱石拾いは?それは次章にて!
次の記事はこちら→鉱物の不毛地帯!?かつての大銅山は今?④
コメント
お~出ましたね
インクラインは有名なようで 当時のケーブルカーみたいな写真を見たことあります
最近入手した 峰の沢の地図を見ると トロッコは 沢近くの坑口から 採鉱事務所を経由して
北は 合宿所の先 途中で選鉱所のほうに下っています
どんなものが拾えたのか 期待が高まります
どこかに載っていましたね!ジェットコースターみたいで怖そうでした。
山の中にも鉱山施設が広がっていたようですね、地上を走るトロッコ線もかなりあったみたいです。ただ、現在は林道に転用されていると考えています。
期待に添えるか分かりませんが、ご期待下さい笑